細密画というのとは、ちょっと違和感がある。

今のところ、どんなカテゴリーにも収まりきらない池田学さんの作品展が金沢で開催されました。

池田学さんの作品を知ったのは、入江明日香さんの作品を知った直後で、ちょうど切り絵の下絵の参考になるような自然をテーマにした絵画は無いだろうかとリサーチしていた時に、たまたまヒットしたときからです。

最初に絵を見た時は、自然と物体が同化したように微細に描かれた世界観に衝撃を受けました。

この展覧会は最初佐賀県で行われ、巡回して金沢にやってきたものです。

金沢なら関西からでも日帰りで行けると思って、行ってきました。

池田学展

池田学作品の鑑賞には双眼鏡が必須

池田学さんの制作シーンを事前に映像で見てきましたが、本当にGペンや丸ペンを使用して描かれていることに驚きました。

握りこぶし大のスペースを描くのに、1日かかるという話も十分にうなずけます。

展示スペースは、いくつもの部屋に別れていました。

緻密に描かれた巨樹や森、岩壁などには、よく見ると森の精霊や動物たち、人の姿がユニークな演出で描かれています。

これを発見するには、双眼鏡が必須です。

絵画の隅から隅まで、双眼鏡で覗き見るのも良いし、少し離れて全体を見ても良い。

近くても遠くても、絵画のクオリティが崩れないのが、池田さんの持つ描写力のすごい点だと思います。

自然の中で遊ぶことから生まれた演出

自然の産物をテーマにして描く画家はたくさんいます。

でも池田さんの作品には、どこか自然に対する畏怖や愛情、そして親しみを感じてしまう。

それは、池田さんがアウトドアスポーツを趣味とされ、登山、岩登り、スキーなど、常に自然に触れることをされているからこそできる表現や、演出ができるのだと思います。

絵の中にある岩陰で遊ぶ人々や、スキージャンプをしている人々など、思わず「えっ?」って言っちゃうような遊びが盛り沢山です。

自然に呑み込まれる人や生物の営み

「存在」という作品があります。

存在

とてつもない大きな巨樹の幹を描いた作品で、まるで屋久島の縄文杉を間近でみているような感じがします。

縄文杉の幹は、太く深い皺が幾筋も通り、それが何千年もの時の経過を彷彿とさせるのですが、まさにその時の経過を具体的に絵にするとこうなったというものです。

絵の中には、幾筋も滝が流れ、そのもとに人や動物の営みが細かく描かれています。

僕は普段から巨樹を見に行くのが好きで、樹の幹に触れたり、遠くから眺めたりして、時の経過でこの樹が見てきたものを想像してみるのですが、池田さんの「存在」という作品は、それが見事に描かれているので、あ~やられたなぁって感服しました。

「予兆」という作品があります。

予兆

この作品は津波が、ありとあらゆるものを飲み込む様を連想させるので、東日本大震災が起きてからは展示を控えていたといういわくつきの作品です。

まさかこの絵が完成してから3年後に、震災が起きるなんて予想もしなかったことだと思いますが、どこか予知のような力でもあるのではないかと思ってしまいます。

「興亡史」という作品があります。

宮﨑駿のハウルの動く城を連想させるような外観ですが、たくさんの城が積み上げられてギュッと固めたようなイメージです。

寄って見ると、屋根の上や様々な部分で武士たちが戦っています。

僕はいつもNHKの大河ドラマを見て、日本人は戦うのが好きだなぁと思うのですが、この絵をみるとまさにそれが当てはまります。

そこに何故か線路や電車が走っていたりして、そんな遊び心も満載の作品です。

法廷画家もされていた池田さん

作品の展示は、子供時代に描いたものや、友人などプライベートで描いた作品、そして法廷画家をしていた時の作品がありました。

その絵は、オウム事件裁判のもので、池田さんの鋭い観察力がよくわかります。

大学を卒業してから10年間ぐらい、法廷画の仕事をしていたといいます。

強烈なインパクトと圧倒感

展示のとりを飾るのは、映像でも特集されていたアメリカ・チェゼン美術館の滞在制作プロジェクトで3年を掛けて制作された「誕生」という作品です。

誕生

この作品も巨樹が描かれています。

池田さんが実際に東日本大震災の跡地を取材されて、その時に受けた印象がきっかけとなり、作られた作品です。

でも震災後に世界各地で自然災害に見舞われた地域があることを知り、東北だけではなく、全世界に向けて被災地の再生を「誕生」というテーマで描くように変わっていったそうです。

根本の方には津波や災害で瓦礫の山。

根本から巨樹の幹を辿っていくと、花のツボミが現れて、やがて花が咲き乱れてます。

自然災害は完全に予知できるものではありません。

でも、災害に合ってしまった人々には、沢山の人々の悲しみが何年も続いてしまいます。

とても悲しいことではあるけれど、いつまでも悲しんでいてばかりでは、何も生まれない。

巨樹の成長の営みのように、とても長い時間がかかるかもしれないけれど、生まれ変わった気持ちで、また次の人生を歩み出して欲しい。

そんな強いメッセージを感じました。

金沢21世紀美術館について

この美術館は初めて訪れたのですが、兼六園にも近くて、金沢の観光地の中心にあります。

美術館の建造物もとても前衛的で、敷地に一歩入るだけで、テンションが上がります。

中に入ると、SF映画にでてきそうな未来的でシンプルな空間が広がります。

京都市立美術館のような歴史的な近代建築も魅力的ですが、ここのような未来を感じる建築物もいいですね。

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