穏やかな社会の理想形

穏やかな社会で生きるとはこういう世界のことをいうのだろうか?と思ったのが高村光太郎の残した詩にあった。
私が理想とする穏やかに生きる社会とは、ダラダラと何もせずに静かに暮すことではない。
森羅万象が巡る自然界の法に従い、現象を尊び、人が地球上の生き物の種として力強くたくましく暮らす社会のことだ。
そんな理想を私自身が掲げたときに偶然この詩と出会った。
神仏からの啓示かもしれないなぁと素直に思った。

「五月の土壌」 高村光太郎

五月の日輪はゆたかにかがやき
五月の雨はみどりに降りそそいで
野に
まんまんたる気魄はこもる

肉体のやうな土壌は
あたたかに、ふくよかに
まろく、うづたかく、ひろびろと
無限の重量を泡だたせて
盛り上り、もり上り
遠く地平に波をうねらす

あらゆる種子をつつみはぐくみ
虫けらを呼びさまし
悪きもの善きものの差別をたち
天然の律にしたがって
地中の本能にいきづき
生くるものの為には滋味と塒(ねぐら)とを与へ
朽ち去るものの為には再生の穏忍を教へ
永劫に
無窮の沈黙を守って
がっしりと横はり
且つ堅実の微笑を見する土壌よ
ああ、五月の土壌よ

土壌は汚れたものを恐れず
土壌はあらゆるものを浄め
土壌は刹那の力をつくして進展する
見よ
八反の麦は白緑にそよぎ
三反の大根は既に分列式の儀容をなし
其処此処に萌え出る無数の微物は
青空を見はる嬰児(えいじ)の眼をしている
ああ、そして
一面に沸き立つ生物の匂よ
入り乱れて響く呼吸の音よ
無邪気な生育の争闘よ

わが足に通って来る土壌の熱に
我は烈しく人間の力を思ふ

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